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フランス国立図書館(BNF)のデジタル書庫"Gallica"で見つけた百年前の月刊誌「ジュセトゥ」(Je sais tout=私はすべてを知る、という意味)や新聞「フィガロ」(Figaro)等から記事や画像を紹介。(現在1910年で進行中)


by utsushihara

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バニラ香料商殺人事件(3)(ベルエポック事件簿)

1908年3月3日(火)

外国人登録課は昨日ようやくエンニ氏の申請書を見つけ出した。彼は1870年4月生まれの38歳であり、最初にオルフェーヴル河岸(警視庁)に出頭したときには、ヴォルテール大通り58番地も住んでいた。職業は会計士となっていた。
昨日改めて被害者の家宅捜索をした結果、3年前の日付の遺言書が見つかった。この遺言書によれば彼にはいくらかの財産があった。彼の公証人はスイスのショー・ド・フォンに住むボル氏となっていて、アマール警視は電報を打った。被害者の父親のエンニ氏はスイスのサン=ブレーズに住んでおり、代理人を立ててパリに赴かせている。11区の公安判事は昨日被害者の住居に封印を施した。本日行なわれる予定だった被害者の葬儀は、父親の代理人の到着まで延期された。

警察は犯人捜査の手がかりをたどっているが、今のところ何の結果も出ていない。探していた4人の人物の身元は判明している。いずれもバニラ香料商の顧客である。その中に船乗りが1人おり、現場で見かけたような漠然とした証言もあり、警察では今この褐色の髪の若者の行方を探している。
この男は事件の4日前の2月25日にル・アーヴル街にある興信所の所長のもとを訪れている。その事務所ではエンニ氏から、ある老婦人とその数人の子供から成る家族を探し出してほしいと頼まれており、この若者は調査の結果を教えてほしいと切り出した。しかし所長がそうしたことはできないと断ると、彼は脅し文句を並べ立てた。アマール警視は昨夜、この若者が何者なのかを把握していると語ったが、それ以上の情報の公開は拒んでいる。

出典 Crédit:©BNF-Gallica #288016 « Le Figaro » le 3 Mars, 1908

[ Ψ 蛇足 ]
紐の結び目のやり方と水夫との関係は古典的な推理小説(シャーロック・ホームズなど)でも言及されている。

**この次の関連記事france100.exblog: バニラ香料商殺人事件(4)

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by utsushihara | 2008-03-03 17:39 | ★ベルエポック事件簿1908