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フランス国立図書館(BNF)のデジタル書庫"Gallica"で見つけた百年前の月刊誌「ジュセトゥ」(Je sais tout=私はすべてを知る、という意味)や新聞「フィガロ」(Figaro)等から記事や画像を紹介。(現在1910年で進行中)


by utsushihara

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不実な妻に対する処罰(ベルエポック事件簿)

1909年3月31日(水)

ドーフィヌ街の家庭内騒動;嫉妬に狂った病気の夫が妻にナイフを突き刺して逮捕不実な妻に対する処罰(ベルエポック事件簿)_f0028703_1852847.jpg

5年ほど前に挿絵画家のレオン・バランは、当時16歳だったお針子のマリー=ルイーズ・ボノムを見初めて夢中になり、歳の差が18もあったのもかかわらず妻に娶った。不幸にも画家には恐ろしい胸の病の萌芽があった。子供が生まれて、夫婦に幸福の光が差し込んだのも束の間、病気がレオン・バランを襲い、衰弱した彼は陰気で不機嫌になり、ほとんど働く気力も失っていった。
1年前にバラン夫妻はセーヌ左岸ドーフィヌ街6番地の貸間に引っ越してきた。天気のいい日曜日には夫はセーヌ河岸に行って、何点かのスケッチや水彩画を描き、妻はそれを持って競売所の近くで安値で売り捌いた。
それよりもまず、妻は裁縫師となり、健気にも病気の夫を支える役割を受入れたのだった。だがほどなくして、生来色気があった彼女は、しばしば病気の夫がいることを忘れ、彼が絵を描きに出かけている時間を利用して密会に出向いたのだ。そしてある日、画家は妻の媚態と遊蕩を見つけてしまった。
彼はかきむしらんばかりの苦悩に陥った。そして彼は、自分が生きられるあと数ヶ月を悲惨なものにしてくれるなと懇願した。移り気な裁縫女は彼の望みをすべて約束すると答えた。しかし彼女はその約束を守らなかった。

昨日の朝8時半頃、バラン家の住む建物の6階から大慌てで駆け下りる音が響きわたった。髪を乱し、目を血走らせた画家がころげるように下りてきて、どうかしたのかを尋ねる間もなく通りに消えていった。そのあとから彼の妻がボサボサの髪で下着姿のまま部屋から出てきて、昨日引越してきたばかりの隣人に声をかけた。
「お願いですから、夫が背中に刺したナイフを抜いてくれませんか!」
そう言って彼女が背中を見せると、下着を通して背中に刺さったままのナイフの柄があった。隣人は刃物を抜くどころか、恐怖の叫び声をあげただけだった。次に裁縫女は階段を下り、近くの薬局に駆け込んだ。薬剤師が背中に刺さったナイフを抜き取るや、おびただしい出血が起こり、衰弱した女はすぐに慈善病院に移送された。
逃げ出した夫がどうなったかは誰も知らず、拳銃で自殺したか、セーヌ川に身を投げたかと思っていた。しかし警視庁の刑事がドーフィヌ街の家にやってきて、レオン・バランが警視庁のアマール警視に面会を求め、浮気の妻を殺したので逮捕してほしいと訴えたことを明らかにした。彼は涙ながらに妻を刺したことを後悔しており、これまでのいきさつをすべて語った。アマール警視は彼の話が事実であるように思い、すぐに慈善病院の妻のもとに尋問に訪れた。
彼女は衰弱しており、あまり多くの質問には答えられなかったが、朝起きて化粧をしており、靴を履こうとしてかがんでいたところ、夫が突然近づいてきてナイフを背中に刺したという。最初はあまり大きな痛みを感じなかったが、薬局でナイフを抜いてもらって初めて重傷だったことがわかったと語った。
被害者は依然として重態のままである。

出典Crédit:©BNF-Gallica #618579 «Le Petit journal» No.16896, le 31 Mars, 1909

[ Ψ 蛇足 ]
画像は、「プチ・ジュルナル」紙の新連載小説『パリまで、お車で!』(Pour Paris... en voiture !)の予告挿絵。辺りに目を配る美女の目つきが怪しい!(妖しい?)
by utsushihara | 2009-04-01 18:04 | ★ベルエポック事件簿1909