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フランス国立図書館(BNF)のデジタル書庫"Gallica"で見つけた百年前の月刊誌「ジュセトゥ」(Je sais tout=私はすべてを知る、という意味)や新聞「フィガロ」(Figaro)等から記事や画像を紹介。(現在1910年で進行中)


by utsushihara

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ベルジェ街の悲恋の結末(毒薬と拳銃とロープ)(後篇)

1909年2月2日(火)

結局2人には腹部の重苦しさしか症状に現れなかった。青年が買い求めた薬屋が予見して別の薬を渡したに違いなかった。ジャックは恋人が狂言自殺だと受け取ることをひどく悔やみ、その自滅的な行為をさらに募らせた。
「薬は効かなかったね。でも僕にはまだ拳銃がある。」彼は6発の弾丸を込めてから続けた。「君には僕が血だらけになって死ぬ姿を見てから自分を撃つ勇気はないだろうから、さあ、これでまず自分の口に入れて引き金を引くんだ。心配するな、僕はすぐ後を追うから。」
シュザンヌは恋人の言い草があまりにもメロドラマ的なのを感じて、この年齢で人生に別れを告げるのは馬鹿げていると気づいた。生きようと考えるのは常に若い娘ではなかろうか?

彼女は拳銃を手にした。そして恋人のほうに銃口を向けたまま、いきなり部屋の戸を開けて逃げ出した。ダダダッと階段を駆け下り、外に出て、通りかかった辻馬車を止めて飛び乗り、両親の店まで戻ったのだ。娘が青ざめた顔とよれよれの姿で帰ってきたのを見て、両親はあえて何の詰問もしなかった。彼女は彼らの足元にひざまずいて許しを請った。そしてすべての事実を打ち明けた。ベルジェ街での出来事の一部始終が明るみに出て、娘がストリキニーネを服用したのを知って店主は狼狽し、あわてて医者を呼びに行って解毒剤を処方してもらった。

そのあと店主は警察に届け出て、警視がベルジュ街に赴いたが、遅すぎた。拳銃を恋人に奪われて為す術のないジャック・ロジェは、部屋の窓格子の金具にロープを架けて首を吊って死んでいた。死後1時間経過していた。テーブルの上に青年が書いた4通の遺書が見つかった。雇い主と新聞社と警察、そして一緒に死ぬはずだった恋人の父親宛だった。検察局は昨日埋葬許可を出した。
シュザンヌはすっかり体調が回復し、両親にもう絶対自殺なんかしませんと誓っている。

ベルジェ街の悲恋の結末(毒薬と拳銃とロープ)(後篇)_f0028703_1427353.jpg出典Crédit:©BNF-Gallica #618522 «Le Petit journal» No.16839, le 2 Fév. 1909
画像 Crédit photographique : © RMN / René-Gabriel Ojéda / Cote cliché : 92-002080-02 / Titre : Représentation mythologique d'un couple (Daphnis et Chloé ?) / Auteur : Pâris Bordone (1500-1571) / Localisation : Paris, Musée du Louvre

[ Ψ 蛇足 ]
三面記事的な事件ではあるが、まるで掌編小説のようにここまで一気に詳細を書き上げた事件は珍しい。見出しの原題を直訳すると「羊飼い街の悲劇的牧歌」(Idylle tragique de la rue Berger)となるが、「ダフニスとクロエ」の例えにもある青年男女の純愛物語を「牧歌」(Idylle)と題することが多い。たまたま事件の現場もベルジェ=羊飼い(berger)というパリ1区のレアル(Les Halles)に昔から存在する通りの名前だったことも連想できたからだろう。
by utsushihara | 2009-02-04 13:59 | ★ベルエポック事件簿1909