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フランス国立図書館(BNF)のデジタル書庫"Gallica"で見つけた百年前の月刊誌「ジュセトゥ」(Je sais tout=私はすべてを知る、という意味)や新聞「フィガロ」(Figaro)等から記事や画像を紹介。(現在1910年で進行中)


by utsushihara

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オペラ座美人歌手マルジル嬢の急死(の謎)

オペラ座美人歌手マルジル嬢の急死(の謎)_f0028703_12311016.jpg1907年8月14日(水)

長年カフェコンセールで歌っていた美しいマルジル嬢は、今やオペラ座で最高の歌手とされるまで人気が高まっていたが、8月14日ドーヴィルで急死した。

出典:BNF-Gallica #102981 « Je sais tout » No.32; Sept 1907
画像 Crédit d’image : ©CMN: Archives photographiques (Médiathèque du Patrimoine et de l'Architecture) Studio Nadar; Chanteuses par Nadar, 1898.12.31

[ Ψ 蛇足 ]
避暑地ドーヴィルでの出来事、今をときめくオペラ座の美人歌手、突然死・・・三面記事的な話題性はあるものの、特に大騒ぎする必要も感じず、まして「謎の」と言う必然もないのだが、夏の海辺では水難事故も多いし、将来を悲観しての、あるいは失恋ゆえの自殺だったかもしれない。せめてどんな歌手だったかを調べてみようとしたら、謎が出てきた。
検索で出てきた歌手はただ一人、ジャーヌ・マルジル(Jane Margyl, 1862-1934)だけだった。ところが彼女は1934年まで生き長らえたとある。とすると上記で死んだマルジル嬢は何者なのか?

推理①:オペラ座で同時期に活躍し、人気を分け合った同名の別の歌手がいた。
推理②:このときの報道は誤報で、死んだのは赤の他人だった。
推理③:死んだと思ったら息を吹き返して蘇生した。
①ならばもう一人にも言及があるはずだろうし、②③ともにすぐに訂正記事が載るはずである。

オペラ座美人歌手マルジル嬢の急死(の謎)_f0028703_12313710.jpg(←)左掲の写真は1898年ナダールのスタジオが撮影した有名オペラ歌手のシリーズの一つで、尖った顎が好みか否かで左右されるが、なかなかの美貌である。検索による生年だと、この時彼女は36歳であり、すでにオペラ・コミック座のほうで主役を歌っており、人気も高かったはずである。
オペラ座へのデビュは1905年9月22日、サン=サーンスの歌劇『サムソンとデリラ』(Samson et Dalila)のデリラ役のメゾ・ソプラノを歌っている。BNF-Gallica(下記参照)に収められた当時の雑誌「ムジカ」(Musica)の表紙を飾ったほどの評判だった。
もしドーヴィルに滞在していたのが彼女であれば、まだ45歳の円熟期で惜しまれたことになろうが、歴史的には彼女は72歳まで長生きする。この件は迷宮入りかもしれない。

*参考サイト:BNF-Gallica Image : Jane Margyl
Melle Jane Margyl, dans le rôle de Dalila, dans “Samson et Dalila” de Camille Saint-Saëns
by utsushihara | 2007-08-13 12:30 | オペラ、音楽、演劇1907-08